スポーツによって発生する怪我は、発生状況によって「スポーツ障害」と「スポーツ外傷」に大別されます。
スポーツ障害:オーバーユース(使いすぎ)や持続的な負荷によって発症
スポーツ外傷:一度の大きな外力によって発症
主なスポーツ障害
・オスグッド病
・テニス肘
・ジャンパーズニー(ジャンパー膝)
・アキレス腱炎
・野球肘
・疲労骨折
【オスグッド病】
・成長期に発生することが多い
・膝の前下部に痛みが生じる
・膝の曲げ伸ばしによって、膝蓋腱と脛骨が付いている脛骨粗面が剥離してしまうことで発症する
【テニス肘】
・肘の外側に痛みを生じる
・日常生活動作の繰り返しでも発症することがある
・30-50代に多い
【ジャンパーズニー(ジャンパー膝)】
・膝の伸展を繰り返すことで膝蓋骨周辺に痛みが生じる
・バレーボールのようにジャンプを繰り返す競技に多い
・サッカーやランニングでも、しばしば生じる
・大腿四頭筋のストレッチ不足が関与している場合が多い
【アキレス腱炎】
・足首を酷使することでアキレス腱が炎症を起こし痛みを生じる
・足首の使い方が発症に影響している
・ふくらはぎのストレッチ不足が関与している場合が多い
【野球肘】
・成長期にボールを投げすぎることによって生じる肘の障害
・投球時や投球後に痛みが生じる
・肘の外側では骨同士がぶつかり、骨・軟骨が痛む
・肘の内側では靭帯・腱が痛む
【疲労骨折】
・同じ場所に小さな外力が繰り返し加わることで骨にひびが入る
・病状が進むと完全に骨折する場合もある
・脛骨と中足骨に多い
スポーツ障害の予防
- ・自分の体をよく知る
スポーツ障害を予防するためにまず重要なことは、自分の体のことをよく観察することです。
スポーツをする前には、筋肉の硬さや関節の広がり、重心の位置などを確認する。
いつもとどう違うのかを把握することが非常に重要です。
例えば、足首が普段よりも硬くなっていることに気付かず運動してしまうと、普段のイメージで動かしている指令に対して足首は動くことができません。すると、足首に大きな負担がかかるため、足首をかばうような動作になります。結果的に、繰り返し足首にばかり負荷がかかってしまいスポーツ障害のような慢性的な損傷を起こしてしまうことになります。
体に起きている小さな変化を見逃さないようにするためには、日々自分の体と向き合い、自分の体をよく知ることが大切です。そして、いつもと違うと感じたら無理をしないことがとても大切です。
- ・やりすぎない
スポーツ障害はオーバーユース(使いすぎ)によって起こります。
決してやりすぎることなく、休息日を作るなどしてスポーツ障害の予防に努めましょう。
- ・痛みを感じたら続けない
また、痛みがある場合には運動を続けないようにしましょう。
少々の痛みがあっても我慢して続けてしまう方が多く、とても簡単なようで簡単にできない予防法です。
痛みの原因がわからないまま痛みを我慢してスポーツを続けていると、あるとき我慢できないくらい
痛くなり、治療を行っても治りにくい状態となってしまいます。
そのため、痛みを感じたときには決して無理せず、スポーツを中断することは非常に重要です。
主なスポーツ外傷
・脱臼
・骨折
・捻挫
・靭帯損傷
・肉離れ
・脳震盪(のうしんとう)
【膝の靱帯損傷】
スポーツによって大きな力が加わり、膝の靭帯に損傷が生じること。
膝には4つの靭帯、 内側側副靭帯
外側側副靭帯
前十字靭帯
後字靭帯
に分けられる。
内側側副靭帯と外側側副靭帯は膝の横方向への動き、前十字靭帯と後十字靭帯は前後方向への動きに連動しており、そこに無理な力が加わるとそれぞれの靭帯が損傷してしまう。
特に内側側副靭帯と前十字靭帯が損傷を受けやすい部位である。
また非常に強い力が加わった場合は、複数の靭帯が損傷してしまうことも。
【足関節捻挫】
・足首を不自然に捻ってしまい、足首の靭帯などが損傷してしまう怪我
・予防法:足を捻らないようにするためのバランス力の強化を行う
30秒間ほど目を閉じたまま直立するテスト:足首のバランス力や癖を知る
直立が維持できない=足首のバランス力が弱い
→ 足首まわりの筋力を鍛える
内反捻挫(足を内側にひねることで起こる捻挫)
足の外側に重心を置く癖がある場合に起こしやすい
→ 足を外側に引っ張る筋肉を鍛える
【肉離れ】
・筋肉が引っ張られながら収縮したときに起こる筋肉の断裂です。
ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)がぎゅっと収縮している状態で、急に膝を伸ばす動きをして筋肉が
無理やり引っ張られることなどで発症します。
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「エキセントリックな負荷」
肉離れの予防には、これに対する筋力を鍛えるトレーニングを行うことが重要となる。
【脳震盪】
頭部に外力が加わった結果生じる、一過性の意識障害、記憶障害
脳の器質的な損傷(脳自体の損傷)は原則として伴わない
応急処置としては安静、頭部や頚部の冷却
意識レベルやバイタル、麻痺のチェックが重要
【頸椎損傷(頸損)】
頸椎の不安定性が増して、まひが悪化することがある
呼吸・循環障害が生じやすい
早急に救急搬送を手配する
スポーツ外傷の応急処置
「RICE」 ⇒ 「POLICE」
・Protection(保護)
・Optimal Loading(適切な負荷)
・Ice(冷却)
・Compression(圧迫)
・Elevation(挙上)
新しいスポーツ外傷の応急処置「POLICE」
・Protection(保護)
⇒添え木や装具などを使用して患部を保護する
- ・Optimal Loading(適切な負荷)
⇒組織の修復を促し怪我からの回復を早めるために患部に適切な負荷をかける
- ・Ice(冷却)
⇒アイスバッグやビニール袋などに入れた氷で患部を冷却する
- ・Compression(圧迫)
⇒内出血や腫脹を防ぐため患部を弾性包帯などで圧迫する
- ・Elevation(挙上)
⇒患部を心臓より上にあげて、腫脹やむくみを抑える
これまでの「RICE」の R(Rest:安静)が、
P(Protection:保護)O・L(Optimal Loading:適切な負荷)に置き換わっています。
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負傷した部分をまったく使わない状態が続くと、怪我からの回復が遅くなってしまうことがあります。
ex)足首の捻挫の場合、足首の安静を保ちすぎると患部のむくみが進行していき完治に時間を要する
ことがあります。そのため、患部を保護しながら少しずつ負荷をかけることで、怪我からの早期
回復が期待できます。